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戸建て不動産売却時の節税事例
戸建て不動産を売却する際には、売却価格だけでなく、それにかかる税金についてもどのくらいになるか把握しておいて、きちんと納付できるように計画を立てておく必要があります。
高く売れればその分税金も高額になりますので、あらかじめ税金額を計算しておいて、いくら手元に残るのかも知っておいたほうがいいでしょう。
実際に不動産を売却して節税に成功したケース、失敗したケースなどの事例をご紹介します。
売却時の時価を申告して節税に成功したAさんのケース
商社マンとしてバリバリ働いていたAさんは、退職金を元に老後の楽しみとして海の近くに別荘を購入しました。当初は家族で遊びに行ったりして有意義に利用していたのですが、子どもたちが大きくなって独立するようになるとその機会は減り、別荘としての使い勝手の悪さや交通の便が悪いことなどから持て余すようになり、維持費もかかるので売却を決意しました。
別荘の評価額は土地と合わせて3,000万円ほどになるのですが、いざ売ろうとするとなかなかその価格では買い手がつきません。最終的に2,000万円近くにまで売値を下げて売却することができました。
売却価格が高すぎると利益として計上されて譲渡所得税も高額になりがちですが、高値で売れるのを待つよりも、価格を下げて早めに手放したほうが、固定資産税などもあわせて結果的には節税になることもあります。
さらにAさんは、別荘の売却価格を時価の700万円で申告したことにより、大幅に相続税を節税することにも成功しています。
売却時だけでなく、長い目で見た節税対策を考えるのが成功へと導くカギとなるでしょう。
確定申告の遅れで譲渡所得税に延滞税がかかったBさんのケース
不動産を売却した場合は、確定申告を行って税務署に譲渡所得の報告をする必要があります。しかし、サラリーマンであるBさんは確定申告をしたことがなく、税金についての知識も乏しかったため、仕事の忙しさにかまけて不動産を売却してから確定申告を怠ってしまいました。
売却などにより利益がありながら確定申告をしないままでいると、追徴課税により本来の納税額に5%~40%の税率が加算されてしまいます。
早めに気づいて期限後に自己申告をすれば延滞税も少なく済みますが、税務調査によって発覚した場合は期限の翌日から完納する日までの延滞税がかかってきますので、譲渡所得にかかる控除や減税措置を受けられたとしても意味がなくなってしまいます。
結果的に、Bさんは多額の延滞税を納付することになり、節税には遠く及ばない事態になってしまいました。
納税を済ませた後から譲渡所得税の還付を受けられたCさんのケース
不動産を売却する場合に、どのくらい利益が出るのかを計算するために、その不動産の取得費(購入費など)を正確に割り出す必要があります。
しかし、取得した日が古かったりして、購入した際の売買契約書や領収証を紛失していることもあります。
その場合、取得費は不明となり売却価格の5%が取得費用として認められます。
Cさんの場合、
売却価額が9,800万円になっているので、売却価格の5%である490万円が取得費となり、譲渡費用350万円、マイホームの譲渡による3,000万円の特別控除と合わせて、9,800万円-490万円-350万円-3,000万円=5,960万円が譲渡所得となりました。
3,000万円の特別控除を受けても大きな金額になります。それに譲渡所得税・住民税をかけると、納付税金額は5,960万円×14%=834.4万円になり、納税を済ませました。
しかし、後からほかの書類によって、不動産の購入金額が8,000万円であることがあきらかになり、納税後ではありますが税務署に提出したところそれが認められ、9,800万円-8,000万円-350万円-3,000万円=0円が譲渡所得となったため、譲渡所得税・住民税はまったくかからないということになり、納付した834万円を還付してもらうことができたのです。
売買契約書や領収証などがなかったとしても、なんらかの手段で証明できれば、納税した後でも税金の還付を受けることはできるので、諦めず古い書類を探してみる価値はあるでしょう。
弟と遺産分与をして高額な譲渡所得税と住民税に慌てたDさんのケース
Dさんは、亡くなった父親からの遺産として戸建ての不動産を相続しました。
相続する不動産はマンションと一軒家があり、両方とも時価が5,000万円程度ということだったので、弟と話し合って平等になるように分け、Dさんは一軒家を、弟はマンションを相続しました。
古い一軒家を相続したDさんは、広い家ながらも古くて地方にあるため、自分で住むにも適さず管理にもお金がかかるため、はじめから売却するつもりでいましたし、希望通りの額で売却することができてほっとしていました。
また、弟も同じ額の5,000万円でマンションを売ることができ、それぞれ税理士に依頼して確定申告を行いました。
しかし、その結果は弟よりも1,000万円も税金が高くなっていて、Dさんは驚きました。 この税金の違いは、売却した不動産の譲渡所得額によるものです。
弟が相続したマンションは比較的新しく、そのマンションにかかった取得費は7,000万円であったため、譲渡所得はゼロ円、すなわち譲渡所得税と住民税もかかりません。
一方、Dさんが相続した一軒家は敷地も広く、マンションと同等の時価でありながら、先祖代々の古い不動産であることから、購入した時期や価格も判明せず、証明できる書類も残っていなかったのです。
そのため、Dさんの一軒家の取得費は売却価格の5%、つまり250万円になってしまい、譲渡所得が非常に高くなってしまったのです。
事前にわかっていれば売却価格を抑えることもできましたし、弟と遺産分与をする際に平等になるよう分けることもできたのです。
節税をするためには、いろいろな面から検討して、わからないことは事前にプロに相談することも必要になってくるのでしょう。
節税には事前の準備が重要
今回は、節税に成功したケースと失敗したケースをそれぞれ2例ずつご紹介しました。 成功した人と失敗した人の大きな違いは、「事前に準備しておいたかどうか」ということでしょう。
Aさんの場合は、売却にかかる税金だけでなく、その後の相続税までも見越した準備をしていたおかげで、大幅な節税につながっています。
Cさんの場合は、納税までに取得費を証明できる書類を見つけられませんでしたが、マイホームの譲渡による3,000万円の特別控除を受けられたことも大きかったですし、時間をかけて早くから書類を探していたことで、還付を受けることもできました。
しかし、Bさんは売却による税金についても詳しく調べないまま、確定申告も怠ってしまったため失敗していますし、Dさんも、事前に譲渡所得や不動産の取得費用について調べていれば後から高額な税金について知らされることもありませんでした。
特に、兄弟と遺産分与をした結果なので、先にわかっていれば二人で税金を負担することもできたはずでした。
そのほかに多い失敗例として、譲渡所得税と住民税の存在を忘れていて、後から多額の納付書が届いて慌てるというパターンもあります。
納付書が届いた時に現金がないと納付できずに延滞税がかかってしまうこともあるので、あらかじめ譲渡所得税と住民税の納付額の分はお金を用意しておけばリスクを減らすこともできます。
いずれにせよ、不動産売却の節税には事前の準備と知識が欠かせませんので、不動産会社や税理士さんなどに相談しながら進めていくようにしましょう。